札幌証券取引所(札証)が2019年3月期の決算を2019年5月24日に発表しました。今期の決算では手数料収入が増加したものの、昨年起こった米中貿易摩擦を懸念により株式相場が低迷したことで売買代金が減少し、余剰金が7割減少したとしています。
2019年3月度の余剰金は7割減少の1900万円
札証が発表した2019年3月期の決算において、企業の純利益に該当する余剰金は2018年3月期に比べて7%減少の1900万円になったとしています。
後述している通り、会員費の値上げや新株発行などで手数料収入は増加したものの、昨年は米国利上げや米中貿易摩擦懸念が浮上するなど、経済にとってマイナスな材料が増えたことで、株式相場が大きく急落し、投資家が積極的に売買しづらい状況がつづいたことが大きく影響したとしています。
また、札証の売買代金の9割を占めるRIZAPグループ(旧健康コーポレーション)において、企業買収を加速させたことから、子会社の業績不振が発端となり、業績が低迷したことで、成長を期待した買いが減少したことも響いた形となりました。
2018年度の年間売買代金は1915億円、手数料収入の増加で黒字維持
2018年度の売買代金は1926億円となり、前期に比べて約4割減少したとしています。貿易摩擦の影響を懸念して株式相場が大きく下落するなど不安定な相場が売買代金を押し下げた形となりました。
また、近年ではコーポレート・ガバナンス(企業統治)の強化が求められている中、上場時の審査においても厳格化する動きが増えており、その審査に係る上場審査部を増員するなど人件費も増えています。
一方で、手数料収入については増加となりました。会員となっている引き受け証券会社より徴収している会員費を値上げしたことに加え、RIZAPグループやアークスが新株を発行したことやIPOが2社出たことも手数料収入の増加につながったことで、黒字は維持できた格好となります。
優良な中小企業の開拓を進める
札証においては、大半の売買をRIZAPグループが占めていることから、優良な中小企業を発掘が課題となっています。これまでRIZAPグループは期待が先行して買われていた側面がありましたが、今回の業績低迷で市場で失望が広がったことで、札証の経営にもわずかながらに影響が出たことが今期の決算で浮き彫りとなりました。
そのため、札証では、特定の銘柄の売買に依存している状況から脱却し、道内の優良な中小企業を発掘し、上場を支援する体制の強化を進めています。
2019年5月21日の記事で紹介したましたが、2019年6月には札幌市内で分譲マンションを手が下ける日本グランデが上場を予定しています。今後も優良企業のIPOを増やすことで、成長性とともに売買の増加と道内経済の活性化につながることに期待したいです。