北海道旅客鉄道(JR北海道)と東京急行電鉄(東急)は、道内で豪華観光列車を共同で運行する計画をしていることを明らかにしています。
JR北海道は経営安定化を目指して不動産事業など収益多角化に乗り出していますが、縮小する路線網を維持していくためにも、東急と連携して需要を喚起する取り組みを行います。
JR北海道は東急と連携して観光列車を運行
JR北海道は、東急と連携して観光列車を運行している方針であるとしています。現時点における計画ではJR北海道の鉄道網を東急に貸し出すことで観光列車を運行する形を検討しているとしています。
JR各社においても観光列車の導入が増えている中、JR北海道は経営の安定化が最優先とされる中で、2016年8月13日の記事でも紹介しましたが、観光列車の検討段階に留まっていました。
今回、東急と連携して観光列車を運行することで、東急に運行を委託するだけではなく、東急から観光列車のノウハウを学ぶことで、これらをテコに早期経営の安定化につなげていきたい思いがあると考えられます。
東急は横浜駅と伊豆急下田間でJR東日本の線路を借りて観光列車を運行
東急は東京と神奈川県を結ぶ通勤路線を運行しているイメージがありますが、実はすでにJR東日本と東急傘下の伊豆急(静岡県伊東市)の2社の路線で豪華観光列車を運行しています。
東急は「ザ・ロイヤルエクスプレス」という名称で2017年7月よりJR横浜駅からJR東海道線とJR伊東線を経由して伊豆急下田駅まで運行しています。
ザ・ロイヤルエクスプレスは、超豪華仕様の観光列車で、デザイナーにはJR九州のななつ星をはじめ、観光列車から通勤列車までのデザインを手がけた水戸岡鋭治氏を起用しています。乗車には事前の予約が必要となり、ホテル宿泊と観光がセットになったプラン「クルーズプラン」が大人一人15万円、乗車のみであれば食事付きの片道乗車プランがプラチナクラスであれば3万5000円となっています。
東急が道内で運行する観光列車もこれと同様の豪華仕様の列車を計画しており、道の観光とセットになったプランなど、道の魅力を十分に満喫できる観光列車として期待が高まります。
JR北海道は観光列車により収益の安定化を目指す
JR北海道は、これまで観光列車の運行を目指して、様々な形で運行形態を模索していたものと思われますが、東急と組むことで、自社で観光列車を運行するのと比べ、早期に観光列車の運行ノウハウを手に入れられる他、東急からの鉄道収入が得られるなど、経営の安定化に向けた起爆剤として期待が高まります。
また、東急としても、首都圏においても少子高齢化など通勤電車の需要の減少が予想される中、先手して観光列車を運行するなど将来的な収益基盤の構築を急いでいます。その中でも、日本有数の観光地である北海道で観光列車を走らせることができれば、同社にとっても大きな収益機会ともなりそうです。
観光列車の事例としてはJR九州は、先程の水戸岡鋭治氏を起用した観光列車や特急列車を走らせるなど、あえて鉄道に乗ってもらう仕組みを構築することで、鉄道需要を喚起し、不動産事業をあわせて安定経営を進めたことで、2016年10月に東証一部に上場しています。
JR北海道も東急の力を借りすことで、どこまで経営が回復するか今後の動向にも注視したいところです。