2016年8月11日に道内を運行する観光列車を新たに導入検討していることを日本経済新聞北海道地域版が明らかにしています。
北海道は本州では見られない壮大な自然を車窓から楽しめるなど、鉄道での旅行は北海道観光の目玉であり、観光列車の導入には大きな期待が寄せられますが、人口減少やマイカーの普及などで赤字路線が増えるなど北海道の鉄道インフラには様々な課題があるのも事実です。
北海道新幹線の開業で乗客率10%増で観光列車の要望が増加
2016年3月に北海道新幹線が開業し、乗客率は10%上昇しました。開業以降は東京から新函館北斗間が4時間程度要することから、乗車率の低迷が懸念されてはいましたが、ゴールデンウィーク時期の観光需要と修学旅行による団体客の利用が乗客率の押上に寄与した形です。
北海道新幹線と関連して、北海道の壮大な自然を鉄道て楽しみたいといった要望も増えています。
2015年8月にJR九州が、鉄道デザイナー水戸岡鋭治氏監修のクルーズトレイン「ななつ星」に加え、車内で美味しいスイーツが楽しめる「或る列車」を運行開始、JR東日本も豪華クルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」を2017年5月より運行開始予定など、高付加価値な鉄道サービスの提供が増えています。
JR北海道の経営状況はなお厳しい
本数が少ない単線イメージ写真(PhotoAC)
北海道新幹線の開業で明るいニュースも増えていますが、道内で鉄道を運行する「JR北海道」の経営状況はなお厳しい状況にあるといえます。
JR北海道が2016年5月9日に発表した2016年3月期の連結決算では、営業損失が352億円の赤字で過去最大になったことを明らかにしています。
老朽化した鉄道車両や施設などの減価償却費がかさんだことや、北海道新幹線関連の開業準備費用などが膨らんだことを理由としてあげています。また、事故や不祥事が相次いだことから安全や修繕などの安全投資を増やしていることから、2017年3月期の決算では年間約180億円の経常損失を見込んでいます。
JR九州の多角化をモデルに収益の強化が必要
水戸岡鋭治氏が監修したJR九州「特急かもめ号」885系(福岡市博多区:PhotoAC)
厳しい経営状況が続いているJR北海道ですが、大半のローカル線を抱える鉄道会社としてJR北海道と似た側面がある鉄道会社「JR九州」は、鉄道デザイナー水戸岡鋭治氏を招いて、普通列車や特急列車問わず、木材など自然の要素を取り入れたデザインの列車を導入することで、単純な公共交通機関から「乗る楽しみ」を乗客に与え、九州の観光需要に寄与した形で多角化を進めています。
JR北海道の優先事項である安全投資と平行して、単純な交通機関としてサービスを提供するのではなく、観光需要を上手く取り込み北海道の壮大な自然と融合し「乗ることを目的とした列車」で、多くの観光客に体験をあたえることが収益改善の大きな鍵となりそうです。