2016年3月26日に開業した北海道新幹線ですが、旅行客の呼び込みだけではなく、物流構造面からも様々な論点から注目を浴びています。外から旅行客を呼び込むことも大切ですが、道内にある北海道の商品をいかにして外に売り込んでいくか、この面からも北海道新幹線が果たす役割は大きいものになっています。
貨物物流と旅行客輸送の両立が課題
最高時速260kmの北海道新幹線が東京-新函館北斗間の4時間の壁を崩すことができなかった最大の要因と言われているのが、青函トンネル内の貨物列車との共用区間の存在です。
貨物列車の最高時速は140kmであるため、この隣を新幹線が最高速度で走行すると、速度差から大きな風圧が生まれ、貨物列車のバランスが崩れてしまうおそれがあります。このため、貨物列車との共用区間内においては、新幹線は速度を落として走行せざるを得ないのです。
この一面だけを切り取ると貨物列車が悪者のようにも見えてきますが、青函トンネルを通る貨物列車は北海道の物流の根幹を支えていることを理解した上で議論を重ねていくことが必要です。
貨物版新幹線の開発
北海道新幹線の開業に伴い、青函トンネル内には従来の在来線用の線路だけではなく、新幹線用の標準軌も敷設されました。この新幹線用の標準軌を利用して、貨物輸送も行うことができないかと検討が始まっています。
JR北海道では、貨物列車に積んでいたコンテナを台車ごと新幹線貨車に積みこみ、時速200km以上で貨物輸送を行う「トレイン・オン・トレイン」という構想を発表しています。貨物輸送の速度そのものを向上させる貨物版新幹線という発想です。既に苗穂工場で試験車両による検証も行われており、早期の実現化が期待されています。
北海道新幹線そのものを貨物輸送に利用
貨物ターミナルの様子(出典:足成)
現在、北海道の水産物を首都圏に出荷する際にはトラック輸送という選択肢をとることが多くなっています。トラック輸送は航空便輸送よりも安価というメリットがある反面、輸送時間がかかり、また、悪天候時の青函フェリー遅延や欠航というリスクもあります。
このような貨物輸送の課題を解決していくためのひとつの手段として、はこだて未来大学の長野章教授と室蘭工業大学の片石温美准教授から、北海道新幹線の車両の一部を貨物輸送に利用してはどうかという提案も出ています。
北海道の水産物を新幹線で輸送することによって、大消費地である東京まで短時間で運ぶことができるようになり、鮮度面も合わせて競争力が強化されるのではないかとのことです。コスト面の課題もあり、すぐには実現はできないかもしれませんが、北海道新幹線には旅行客呼び込み以外にも多くの可能性を秘めていることが分かります。