2016年5月に紹介した発着枠の拡大など、観光客にとって利便性が高まっている新千歳空港ですが、北海道内生鮮食品の流通拠点としても機能強化が進んでいます。北海道庁として道産食品の輸出額1000億円を目標にする中で、空の玄関口として新千歳空港が果たす役割も大きくなっていきそうです。
今回は、新千歳空港における生鮮食品の輸出増加に向けた取り組みを紹介します。
新千歳空港が抱える課題とは?
北海道産の生鮮食品は海外の富裕層にも人気があり、国際的な競争力もあるため、コストが高い航空便を利用した上でも輸出が可能という一面があります。また、輸送に時間がかかる船便よりも航空便の方が鮮度を維持できるというメリットもあるのです。
一方で、新千歳空港への貨物搬入は原則午前8時半~午後7時半に限られているため、道内各地から生鮮食品を輸送するトラックが時間外待機を余儀なくさせられることもあり、運転手不足が深刻な物流業界からは効率性向上を求める声もあがっていました。
深夜・早朝の貨物受け入れの実証実験に着手
深夜便の出発に向けて搭乗待ちを行う飛行機(出典:ぱくたそ)
新千歳空港の課題を解決していくため、国際貨物を取り扱う札幌国際エアカーゴでは、北海道産の生鮮食品の輸出増加に向けて、保冷施設を拡充した上で、深夜と早朝も含めた24時間体制の貨物受け入れを実現していくための実証事業に今年の秋から着手していくことをあきらかにしました。
生鮮食品を保管する冷蔵・冷凍設備を今の2倍の約540平方メートルに拡張するほか、製氷機を整備して鮮度維持体制を構築していくとのことであり、海外の富裕層に北海道産の鮮魚や精肉、果実をスピーディかつ新鮮な状態で届けることが可能になります。
札幌国際エアカーゴの2015年度の輸出実績は約5900トンで5年前と比較すると4倍近くに増えているところですが、これを2018年には1万トン規模にまで拡大していくとの目標を掲げています。
道内食品業界にとって大きなチャンス
北海道庁では、本年2月に道産食品輸出額1000億円を目指す「食の輸出拡大戦略」を決定しています。成長著しい海外の「食」市場を開拓することによって、道内の農水産業・食品加工業の発展を目指していくことが狙いです。
今回の新千歳空港の貨物受け入れ24時間化の動きは、これに応えたものと言えそうです。道内の産地にとっては時間を気にせず生鮮品を発送できる上、深夜・早朝に新千歳空港に着いたものを朝の便で輸出することなども可能になりそうです。また、人手不足に悩む物流業界にとっても空港周辺での時間外待機から解放されるため、生産性や収益性の向上につながっていきそうです。