2016年6月23日に英国で実施されたEU離脱の是非を問う国民投票は、残留を願う関係国の思いとは裏腹に、離脱という結果となりました。離脱派優勢の速報が出た瞬間に世界の株式市場は混乱を見せ、世界の株式時価総額が一気に300兆円も消失したとも報じられるなど、英国を始め世界経済への影響も懸念されます。
海を越えて世界経済を揺るがした英国のEU離脱問題ですが、北海道経済に対してはどの程度の影響があるのか分析していきます。
株式市場は落ち着きを取り戻しつつある
過去1ヶ月間の日経平均株価推移(筆者作成)
英国のEU離脱決定時は東京市場も混乱を見せ、日経平均株価は離脱派優勢の速報が出た6月24日に前日比1286円安、年初来最安値となる1万4952円となりました。しかし、週明け6月27日以降は買い戻しの気配が続き、5日続けて上昇、7月1日時点では1万5682円にまで戻りました。
政府・日銀が緊急会合を開き、政策を総動員して対処していく方針を表明したことによる安心効果も一定程度あったものと評価できます。
札幌証券取引所単独上場会社の平均株価についても、6月24日に下落を見せたものの、7月1日時点では以前の水準にまで戻っています。
観光市場への影響は限定的か
平成26年度外国人来道者の割合(筆者作成)
今では北海道の基幹産業にもなっている観光市場への影響も気になるところです。北海道を訪れた外国人の数は、平成26年度実績で約154万人ですが、このうち87%はアジアからのものですので、英国・EUからの観光客が減少したとしても直ちに大きな影響が出るとは考えにくいところです。
一方、英国のEU離脱決定によって不安が高まったこともあり、安全資産である円の価値が相対的に上昇していることが気になるところです。2016年当初は1ドル120円台だった円相場ですが、6月24日には2年7カ月ぶりに99円台をつけました。7月1日時点では102円台にまで落ち着きましたが、この状態が長期化していくと、外国人観光客全体の日本離れが進んでいくことが懸念されます。
これまでのインバウンドブームは円安基調を追い風にしていた面もありますが、これを機会に為替相場に左右されないような体質強化を進めていく必要があるのではないでしょうか。
一次産業へのダメージは意外と少ない?
道内の農林水産品の輸出先もアジアへとシフトしつつありますので、円高基調が続かない限りは大きな影響は出ないのではないでしょうか。また、英国のEU離脱によって原油価格も下落の動きを見せていますので、円高のデメリットと原油安のメリットで相殺しあう結果に落ち着くかもしれません。
また、道内の農林水産品は価格ではなく、高品質であることを売りにしてブランド展開していますので、海外向けの商品単価を値上げしても、ある程度は受け入れてもらえるという強みがあります。