2014年11月に成立した「まち・ひと・しごと創生法」では、「地方人口ビジョン」と「地方版総合戦略」の策定が地方公共団体の努力義務として盛り込まれています。これら地方創生に向けた政策立案の参考ツールとして2015年4月に供用開始されたのが「RESAS(地域経済分析システム)」です。北海道内の市町村でもRESASを活用した政策検討が進められています。
今回は、道内におけるRESASを活用した地方創生の取り組みについて紹介します。
RESASとは
RESASとは、まち・ひと・しごと創生本部事務局が開発したビッグデータ分析システムです。国勢調査や経済センサスといった統計データを集約、その分析結果を可視化して、地域の特徴や課題を抽出できます。「産業マップ」「観光マップ」「人口マップ」「自治体比較マップ」の4つのマップで構成されており、地方公共団体が地方創生に向けた政策立案をするときの参考ツールとなることが期待されています。
IT産業の高付加価値化に向けた分析を進める札幌市
IT産業イメージ写真(出典:ぱくたそ)
札幌市では、人口の減少を緩和していくために、人口の将来展望や今後5年の年の基本目標、施策等を示した「さっぽろ未来創生プラン」を策定しました。この計画の中には、基本目標のひとつとして「安定した雇用を生み出す」ことを掲げ、「札幌市産業の競争力強化」や「札幌市産業を支える基盤づくり」などに取り組むこととされています。
これらの政策目標を達成していくために、札幌市ではRESASを活用して現状の把握や課題の分析を行いました。その結果、これまで振興策を講じてきたIT産業は、2013年度時点で3593億円の売上を計上するなど、基幹産業のひとつにまで成長してきたことが分かりました。一方で、売上の大半が受託開発となっており、国内企業のIT投資や首都圏の大手IT企業の動向などの影響を受けやすいことも浮き彫りとなりました。
この分析結果を受けて札幌市では、受託開発体質からの脱却を図っていくために他産業との連携によるIT産業の高度化に向けた取組を検討しています。
観光客の流入増加を図る帯広市
雪が積もる十勝平野から眺める十勝岳(出典:ぱくたそ)
帯広市でもRESASを活用して、観光客の流入増加策の検討を進めています。RESASで外国人観光客の行動分析を実施したところ、帯広市を訪れる外国人観光客は少なく、観光客が多い道央・道東圏との周遊関係性も弱いことが分かりました。また、「食」に強みを持ちつつも、市内に宿泊施設が少ないために、滞在型ではなく通過型の観光地になってしまっていることが課題として分析できたようです。
帯広市では、これらの分析結果をもとに、釧路市、網走市といった近隣市町村と連携した周遊観光施策の立案を進めています。