道内で展開している企業の間でM&A(吸収合併)が相次いでいます。2018年のM&Aの件数は85件となり、前年より19件増加しています。M&Aの背景としては景気回復による事業拡大に加え、近年課題となっている経営者の高齢化によって事業継承が求められていることにありそうです。
2018年のM&Aは85件で2016年の過去最高水準に
道内で展開している企業のM&Aの件数は85件となり、2017年と比べ19件増加しています。一昨年の2016年における件数は90件で過去最高の件数となりましたが、昨年も過去最高水準でM&Aが活発になっています。
M&Aによって事業拡大や事業領域の拡大、道外への事業展開の加速、経営者の後継者不足による企業譲渡が増えていることにあります。
ドラッグストアを中心に道外展開や事業領域拡大が目立つ
道内企業でM&Aを加速している業界としてドラッグストア業界が目立ちます。道内で調剤薬局を展開しているメディカルシステムネットワークは大分県を中心に調剤薬局を展開している「永富調剤薬局」を買収しています。道内だけではなく、九州地方でも調剤薬局の展開を行う狙いがあります。
同社は2018年3月期の連結決算で売上高が約93億円と過去最高を記録しており、M&Aを加速させることでさらなる収益力の強化に努める方針です。
道内でドラッグストアを展開しているサツドラホールディングスは函館市でプログラミング教室を展開しているグローバル・エデュケーション・デザインを買収しています。同社では、ドラッグストアにとどまらず教育事業に参入することで不足するプログラマーを育成し人手不足の解決を目指すほか、事業の多角化による経営基盤の強化をしていく方針です。
経営者の高齢化による事業継承の需要も拡大
M&Aでは事業拡大や事業領域の拡大を目的としたものにとどまらず、最近では経営者が高齢化するなど事業継承の需要が増えていることも、M&Aが増加している要因となっています。
帝国データバンク札幌支店では18年において道内企業の74%が後継者を決めていないとしています。また、少し古いデータとなりますが、2016年6月21日の記事で記載している通り、道内の中小企業数も減少傾向となっており、2001年の18万5,314社から2012年は15万3,970社となっています。
少子高齢化により、経営者の後継者の育成困難や要件に見合う人物が見つからないなどにより、経営者が他社に事業をそのまま譲渡する動きも加速しているものと思われます。
金融機関らも中小企業のM&Aの支援にのりだす
先程の2016年6月21日の記事においても、事業継承を進めるべく「北海道金融法務実務者研究会」が2016年5月に発足し、事業継承のノウハウを共有することで、道内の事業継承問題の解決の手伝いを行っています。さらに、道内の金融機関においてもM&Aの仲介に乗り出しています。
北洋銀行や北海道銀行も取引先企業などのネットワークを介して仲介を行う他、稚内信用金庫や室蘭信用金庫など道内信用金庫5行はしんきん事業承継支援ネットワークと提携し店舗において、企業からの相談を行い、専門家と連携してM&Aの支援をおこないます。