北海道IT推進協会が毎年発行している「北海道ITレポート」において、2015年度の道内におけるIT産業の売上高を明らかにしました。レポートによると2015年度は4213億円となり、過去最高を記録しました。
2015年度の道内IT産業の売上高は2014年と比べて4%増
北海道IT推進協会では、昭和57年より毎年「北海道ITレポート」を発行しており、北海道におけるIT産業の経営実態や課題を把握し、道内におけるIT産業の競争力強化を目的として活動が行われています。今回のレポートはIT企業878者に協力を依頼して調査を実施しました。
北海道ITレポートのデータを元に筆者作成
レポートによれば、冒頭でも記載したとおり、2015年度におけるIT産業全体の売上高は4213億円となりました。2014年度は4117億円と比べると2.3%の増加となっています。
IT産業の売上高は調査を開始した1989年の売上高である1568億円を振り返ると右肩上がりで推移しています。2008年度は、4187億円を記録しピークとなりましたが、その後のリーマン・ショックの影響で売上高が3000億円台に後退した後、再び売上高が回復し、2015年度には過去最高を記録しました。
道内と首都圏から開発案件の受注増加が寄与
2015年度の調査で過去最高の売上高を記録した要因としては、道内と首都圏から開発案件の受注が増加したことにあります。
道内から開発案件を受注したことにより増収となった割合は51.0%、首都圏から開発案件を受注したことによる増収となった割合は42.3%となっています。
北海道ITレポートのデータを元に筆者作成
受注先の業種としては、同じIT企業である同業他社が35%として多く、2番目は官公庁の14%となっています。特にシステム開発を請負IT企業は、開発案件に応じて技術者を相互に派遣し、人手を補うという構図が確立されていることから、開発案件が増えると必然的に同業他社による受注が増える傾向にあります。
近年では、IT技術の活用が多岐にわたっており、家電などあらゆるものがインターネットにつながる「IoT」やロボットなどの活用に期待されている人工知能「AI」、情報セキュリティ分野が急速に拡大していることから、システム開発案件の需要も増えているのが現状です。
2016年度は4322億円を予想。人手不足が課題
2016年度の道内IT産業の予想売上高は4322億円となっており、IoTやAIなどの開発需要が引き続き増加が見込まれるから、今後も売上高は増えていくものと考えられます。
受注が増えるなど好調を維持しているように思われるIT産業ですが、システム開発を現場で行う、技術者が不足していることが大きな課題となっています。
道内IT産業の従業員の総数は20,521人となっており、2014年度の20,336人と比べるとわずかに増えているものの、横ばいの状況が続いています。
札幌市では、2016年10月13日の記事で記載している様に、IT人材の育成に積極的な取り組みを行っています。この様な取り組みをさらに強化して技術者となる人材を増やす他、企業としても人材募集を積極的に展開するなど、人材育成と採用の強化が急務となりそうです。