国際農林水産業研究センターは、北海道大学の大学院農学研究院の山田哲也講師らが参加した研究チームがブラジルの大豆品種から耐塩性を調節する遺伝子を発見したことを明らかにしました。大豆は世界で最も重要なマメ科作物です。この研究成果から世界における食をどの様な影響を与えるのか考えていきます。
大豆は世界の食需要を支える重要な作物
大豆は醤油や味噌の原材料となるほか油脂原料としても使われるなど、その用途は多岐にわたっています。
世界の植物油供給量の約3割、 高タンパク質飼料供給量の約7割を担っているとも言われ、その消費量は、この10年程度で倍近くに伸びています。日本においても大豆は主要農作物のひとつであり、北海道では日本の生産量の約3割の大豆を生産しています。
一方、大豆は、イネやトウモロコシなどイネ科作物に比べると生産性が低く、干ばつや塩害などの様々な環境ストレスの影響を受けやすいとの欠点もあるところです。
世界で拡大する塩害被害により大豆の生産に影響
水不足や不良灌漑によって塩害の発生が増えており、大豆生産量が多い中国の乾燥・半乾燥地域でも塩害被害が報告されています。
現在、世界の灌漑耕地の3割近くの面積で土壌塩性化の影響を受けているとされ、日本においても、津波や高潮で海水が流入することによる塩害被害が報告されています。塩害は食糧危機の引き金になることもあり、日本でも高潮で農地が海水に浸かってしまったことに起因した凶作、飢饉が起こったことがあります。
人口が爆発的に増えていく中で、大豆の生産量の拡大は急務であり、そのためにも土壌の塩害対策を講じていく必要があるのです。
研究成果の実用化が待たれる
今回、北海道大学と国際農林水産業研究センターが参加した研究チームでは、強い耐塩性を示す大豆の遺伝子を見出すために大豆の祖先種である野生大豆も含めむ600系統以上の大豆の耐塩性を評価しました。
その結果、ブラジルの大豆品種から塩害に負けない大豆の遺伝子を発見しました。更に、この遺伝子を組み込んだ大豆を塩害被害が発生している畑で試験栽培してみたところ、塩害に負けることなく無事に収穫にまでこぎつけることができました。
塩害被害に悩む地域にとって朗報になるのはもちろんのこと、日本の大豆生産量の約3割を担う北海道にとっても重要な研究成果です。今後、この耐塩性遺伝子を持った大豆が広まることによって、世界規模での食料安全保障が進むことが期待されます。