北国である北海道では毎年多くの降雪を記録します。この気候を活かして道内にはスキー等のウインタースポーツ施設・観光施設が多く立地していますが、エネルギー分野でも「雪」の可能性が広がりつつあります。
雪をエネルギー源として利用する
モノを冷やす、冷たく保つには多くのエネルギーが必要となります。エアコンの室外機を想像いただくと分かりやすいですが、冷房と排熱は表裏一体の関係にあります。モノを冷やす(吸熱)とその奪った熱を外に排出する必要があるのです。環境問題の一つとなっているヒートアイランド現象についても、原因の一つとして都市部でのエアコンの普及があげられています。
それならば、元から冷えているものを冷房のエネルギー源として使ってみてはどうかと考えられたのが雪冷熱エネルギー利用です。エアコン等を使った冷房と比較して地球環境への負荷が小さくなることも期待されています。
道内各地で雪冷熱エネルギーの利用が進む
沼田町では米穀倉庫の冷房のために、雪解け前の3月頃に倉庫周辺の雪を貯雪庫に蓄えています。これにより夏になっても倉庫内は5度以下に保冷され、籾を最適な状態で保管することが可能になっています。
また、北海道の空の玄関口である新千歳空港では世界最大規模の雪冷房が稼動しています。12月から3月の間に積もった雪を貯雪ピットに運び入れ、5月から9月にかけて少しづつ溶かした冷水を配管に通して冷房としています。環境に優しい冷房設備であり、通常の冷房設備と比較して年間でおおよそ1000トンのCO2削減につながっているということです。
データセンターが北海道に集まる日も近い?
美唄市ではホワイトデータセンターの実証実験が進められています。雪冷熱エネルギーでコンピューターサーバーの冷却費用を削減する取組であり、美唄市内の空知工業団地内に3000トンの雪を貯蔵できる雪置き場を整備し、これを利用して冷風をデータセンターに供給していきます。
実証実験施設の現地視察会に全国のデータセンター関連企業が参加しており、大変注目を集めています。更に、データセンターの横に植物工場を建設し、雪を冷却に使用する一方で、サーバーから生じた排熱を植物栽培に利用していく構想もあります。
降雪の多い北海道だからこそ実現可能なビジネスであり、全国からのデータセンター誘致を通じて道内経済の活性化につながっていくことが期待できます。時には悩みの種ともなる「雪」ですが、北海道の経営資源となっていく日も近そうです。