1月19日、農業機械メーカーの「クボタ」が無人で耕作作業ができる自動運転トラクターを発表しました。このトラクターは、GPSで車体の位置を計測し、農地の形状や広さのデータをもとに、自動でハンドルや耕作装置が作動します。今回のクボタのトラクターひとつをとっても農業分野においてもモノのインターネット化(IoT)の活用が着々と進んでいます。今回は道内の農業におけるIoTを活用した事例をご紹介します。
GPSガイダンスで効率的な耕作を実現
農作業の省力化、高精度化に向けた基本的な技術として道内農家の間でGPSガイダンスシステムの導入が進んでいます。
GPSガイダンスシステムとは、GPSによってトラクターの正確な位置情報をリアルタイムでモニターに表示して、正確な運行をガイドするシステムです。農業用のカーナビとも言える存在であり、広大な農地を管理する北海道の農家にとって必要不可欠です。
北海道庁としても導入を推し進めており、GPSガイダンスシステムの北海道向け出荷数は、平成20年度と比較すると10倍近くにまで増えています。GPSガイダンスシステムを活用することによって、広大な農地をムラなく効率的に耕作できるようになり、また、目視が難しい夜間の農作業も可能になりました。
衛星リモートセンシング技術を使って小麦の成熟マップを作成
士幌町農業協同組合では、衛星リモートセンシング技術を使って小麦の成熟マップを作成し、組合員に配布しています。
これまでの小麦の成熟確認、収穫時期の決定は経験に基づく主観的な判断で行われていたこともあり、観察者によって精度にばらつきが多く、観察作業の労力負担が大きいのが課題となっていました。
この課題を解決するために士幌町農業協同組合で導入したのが衛星リモートセンシング技術を使った観察システムです。衛星写真をもとに小麦の成熟状況を確認して、収穫作業に役立てています。小麦の品質低下の原因となる高水分での収穫を低減することも可能となり、生産性向上にもつながっています。
農産物直売所においてもITの活用が進む
美唄市の農家が共同運営している農産物直売所では、二次元コードを活用しPOSレジシステムを導入して在庫管理を行っています。
これまでは、新鮮な野菜や米を販売することによって消費者から人気を集めつつも、商品が品切れになっても補充までに時間がかかり、ビジネスチャンスを逃していた面がありました。
この課題に対して、POSレジシステムを導入することによって、サプライチェーン・マネジメント(SCM)を強化し販売までの一連の流れに対する把握が容易になり、直売所運営も大きく改善されました。更に、集計されたデータを元に、顧客関係管理(CRM)に活用することで、消費者ニーズの把握を行い、長期的な顧客との関係を構築すための営農計画作成の参考になっています。