2016年5月28日、北海道企業の再生、事業承継を進めていくための実務者組織として「北海道金融法務実務者研究会」が発足しました。この研究会には、日本銀行、日本政策投資銀行などの公的金融機関に加えて、道内の民間金融機関、弁護士、研究者と多くの実務者が参加しており、ノウハウの共有が進んでいくことが期待されています。
中小企業の事業承継は北海道経済界にとって大きな課題
北海道新幹線の開業など明るいニュースも多い北海道経済界ですが、その足元はけして盤石なものとは言えません。昨年に実施された国勢調査の結果は人口減少社会の到来を現すものでしたが、これは経済の基礎でもある企業数にも影響を及ぼしています。
北海道内の中小企業数についても、2001年には185,314社あったものが、2012年には153,970社と大幅な減少を示しています。景気情勢も減少要因のひとつではありますが、近年は、後継者がいないことを理由とした自然廃業が増えており、事業承継の円滑化を図っていくことが喫緊の課題となっています。
少子高齢化社会の影響は中小企業にまで波及
イメージ写真(出典:ぱくたそ)
中小企業庁が行った調査によると、全国の中小企業の経営者の平均年齢は59歳、平均引退年齢は中規模企業で67.7歳、小規模企業だと70.5歳となっており、経営者の高齢化も課題となっています。また、60歳以上の経営者のうち、5割以上が廃業を予定しており、特に個人企業においては約7割が自分の代で事業をやめるつもりと回答しているとのことです。
廃業を選ぶ理由として、子供がいない、後継者が見つからないというものが多く、少子高齢化社会の到来は中小企業の経営にまで影響を及ぼしていることが分かります。
北海道金融法務実務研究会は北海道経済界の救世主となるか
廃業を選ぶ企業は売上も少なく赤字というイメージも強いですが、実態は必ずしもそうではありません。日本政策金融公庫が行った調査では、廃業予定企業であっても同業他社よりも良い業績をあげていると回答する経営者が一定数おり、今後10年間の将来性についても4割の経営者が少なくとも現状維持が可能と回答しています。このような企業が後継者が見つからないということを理由に廃業していくのは、雇用維持の観点からも、非常にもったいないことです。
5月28日に発足した北海道金融法務実務研究会では、中小企業の再生、事業承継に関するノウハウの共有を実務者間で図っていくとのことであり、年4回ほどの会合を通じて、現場での応用につなげていくとのことです。
中小企業の事業承継には、企業価値の算定、贈与税、相続税の問題など、多岐にわたる専門知識が必要となります。いまや中小企業の事業承継は、新規創業の促進と同じくらいに重要な課題となっていますので、今後の研究会の動きには期待したいところです。